恐怖対談 – 吉行 淳之介

ほうろうの棚で見かけてなんだかとても懐かしくなって、吉行淳之介の「恐怖対談」を買ってみた。100円だし。

四半世紀前、大学生の頃に吉行淳之介の新潮文庫はほとんど全部読んだと思う。叔母が持っていたのを端から読んでいった。

内容は今となっては全然覚えていない。あんなに読んだのに、もの凄く面白かったと思った印象がない。大人が読んでる日本の現代小説はどういうものなんだろ、と勉強していたような感じだったのかも。他には立原正秋とか。

小説の内容はほぼまったく覚えていないけれど、この恐怖対談は読んだのを覚えている。10人との対談のほとんどを、吉兆で食事しながらしゃべってるんだよ!淀川長治さんさえも吉兆で食事できることを喜んでいる。

作家になりたいと思ったことはなかったけれど、こんなにしょっちゅう吉兆で飯食ってしゃべってられるんなら、作家はいいなあ、なんて思ったんだった。

今回、読み直してみた感想。やっぱりうらやましいなあ。吉兆で飯食ってしゃべくって。

淀川長治さんと吉行淳之介が対談の少し前に、日曜洋画劇場で放映された「激突」を絶賛しているのを、当時の僕は全然何とも思わなかったのかな。

北杜夫との対談で北条民雄の名前を出したところはぞくっとした。

今東光との対談も面白い。本郷菊富士ホテルに谷崎潤一郎を訪ねたときの話なんて、ホントかよ。その頃菊富士ホテルには、泉鏡花があの絵のモデルの彼女と暮らしてて。。。

内容とは関係ないけれど、昭和55年発行のこの文庫本にはどこにもISBNが書いてない。カバーにも奥付にも。ISBNがほとんどすべての書籍についたのって結構最近の話なんだよね。

バーコードとなるともっと後。
17年ほど前に出版流通の仕事を始めた頃に、バーコードがデザインの邪魔だから入れないという話を会議の場で聞いた覚えがある。こっちは物流が仕事でそういうのが困るんだよなあ、と思ったけれど口には出さなかった。確か営業が反対してしぶしぶバーコードが入ったんだった。

今では取次流通する本でISBNバーコードのついていないものを探すのは難しいけれど。