代替医療のトリック - サイモン・シン

読了。必読の書。

読みやすく、重点ポイントが繰り返し語られるから読書になれていなくても心配なし。こういう科学読み物に慣れていないひとにもおすすめ。面白いミステリー小説を読んでいるように、どんどん先が読みたくなる。

プラセボが何故ダメなの?効くならいいじゃんプラセボでも。というのがなぜマズいのか、最後まで読んでよく理解できた。説得された。はあー、面白かった。

ホメオパシーがプラセボ以上の効果がないなのはなんとなく知っていた。けれど、鍼治療もかあ。
あとカイロプラクティックも。これは日本で言う骨接ぎ、整体とは少し歴史的な経緯が違うけれど、例えばWikipediaの柔道整復術をみてみると、自然治癒能力、伝統医療という言葉が並んでいる。代替医療の宣伝文句として頻繁に用いられる言葉として、自然(ナチュラル)、伝統(トラディショナル)、全体(ホーリスティック)の3つを挙げているのだけど、そのうち2つが最初のパラグラフにでてくる。ピンポーン。

こういった個々の代替治療が効くとか効かないとかを知るのも大切だけれど、この本のおもしろさ、すごさはそこじゃない。マニュアル的に参照するだけなら付録としてたーくさん書いてあるリスト(浪越徳次郎の指圧も出てくる)を立ち読みすれば済んじゃう。

この本のすごさの中心は、科学的な根拠(臨床試験)に基づく治療を選ぶことがなぜ重要なのかを教えてくれること。歴史のエピソードを交えて緻密に論理を積み重ねながら、ぐいぐい引き込む文章の力と合わさって。

周囲の子を持つ親には身銭で買い与えたいぐらい。でもそういう熱心が詐欺的な代替医療の特徴でもあってね。クールに薦めるにはどうすればいいんだろ?この種の健康に関する話はとても難しい。できれば友人とは話しあいたくない(家族は別。ちょっとモメてもよく話し合ったほうがいい)。知的な読み物として面白いから読んでみたら?ぐらいか。

しかし、世界レベルはすいごいなあ。

あ、そうだ。サイモン・シンの本はどれもそうだけれど、この本も翻訳がとてもいい。